もくじ(気になる見出しをタップ!)
知るところからはじめよう ― 耳が遠くなる原因と特徴
- 耳が遠いことを認めない理由
- 耳が遠いことを認めてもらうためにできること
これらを理解するには、「耳が遠い」とはどういうことなのかを知るとスムーズにいきます。
そのためには以下の2つのポイントを押さえましょう。
- なぜ耳が遠くなるのか
- 老人性難聴(耳が遠い)の特徴
こういう話はむずかしいイメージがあると思いますが、わかりやすく、簡単にまとめています。
安心して読みすすめてください。
なぜ耳は遠くなるのか
人間の体は年齢を重ねることで、さまざまな変化が起こります。
耳も例外ではありません。
年を取るとることで、「聞こえ」が悪くなることがあります。
その原因は、老化によって以下のような変化がおこるからだと考えられています。
- 音を感じるために大切な役割を果たしている「蝸牛(かぎゅう)」の働きが低下
- 耳から入ってきた音を言葉として処理する脳の働きが低下
ただ、耳が悪くて聞こにくいだけではないということがわかってもらえたんじゃないでしょうか。
このように耳が遠くなることを「老人性難聴」といいます1。
老人性難聴(耳が遠い)の特徴
老人性難聴(耳が遠い高齢者)の特徴2は以下になります。
- 高い音から聞こえにくくなる
- 難聴であることを認めようとしない
- 聞こえにくさは左右でほぼ同じ
- 聞こえにくさは年齢とともに進行する
この中から、老人性難聴を理解するうえで重要な「1.高い音から聞こえにくくなる」について解説します。
「2.難聴であることを認めようとしない」については次の章で解説します。
「高い音から聞こえにくくなる」とは
老人性難聴は一般的に高い音から聞こえにくくなると言われています3。
高い音が聞こえにくくなると、比較的高い音で構成された、
- カ行
- サ行
- タ行
などの聞き間違いが増えます。
その結果、以下のようになります。
- ことばとして聞きとりにくくなる
- 聞き間違い、聞き直しが多くなる
- テレビの音量が大きくなるようになります4
耳が遠いことを認めない理由 ―「不安」
耳が遠いことを認めない理由をひとことで言うと「不安」だからです。
具体的には以下の理由が考えられます。
- そもそも耳が遠い自覚がない
- 老化による身体の変化を受け入れられない
- これまで通りにコミュニケーションをとりたい
- 迷惑をかけたくない
耳が遠いことを認めない理由を、ひとつずつ見ていきましょう。
1.そもそも耳が遠い自覚がない
そもそも聴力低下の進行はすこしずつなので本人は自覚しにくいと言われています5。
その他に、
- 他人との関わり合いがすくなく耳が遠くなってることに気づかない
- 無意識にテレビの音量を上げたり、会話の際には相手の言葉のニュアンスを表情で読み取るなどして聞こえにくにさ対応している
ということも考えられます。
2.老化による身体の変化を受け入れられない
老化によって耳が遠くなることは一般的なことですが、本人にとってそれを認めることは、自分が老いたという現実を受け入れるということを意味するので難しいはずです。
年齢によって身体が変化したり、能力が低下することに抵抗感を持つことは自然な心情だと言えるでしょう。
3.これまで通りにコミュニケーションをとりたい
本人としてはいつもどおりコミュニケーションをとりたいのに、耳が遠いことを認めると、
- 人の助けを借りる必要が出てくる
- 会話するのに相手に負担をかけるかもしれない
という不安があります。
相手の発言を聞き逃したり、会話が理解しづらくなったりすることで、相手や周囲の人々に迷惑をかけるのではないかと心配しているかもしれません。
会話をするのに迷惑をかけることで相手からコミュニケーションを避けられてしまうのではないかという心配もあるはずです。
4.生活の変化
耳が遠いことを認めると、日常生活や社会活動において制約や制限が生じる可能性があります。
人に助けてもらうシーンが増え、自分でできることが減ってしまうのではないかという不安もあるでしょう。
自分でできてたことができなくなるというのはツライですよね。
これまでにふつうに生活してたのに、補聴器をすすめられるかもしれないという心配もあるはずです。
「耳が遠い」ことを認めてもらうには
「耳が遠い」ことを認めてもらうには以下のように、まず、自分がどういう状態なのか知ってもらう必要があります。
- 耳が遠いことを自覚してもらう
- 耳が遠いとはどういうことなのか知ってもらう
耳が遠いことを認めてもらうには具体的にどうすればいいのか、ひとつずつ見ていきましょう。
1.耳が遠いことを自覚してもらう
そもそも耳が遠いことを自覚していない場合は、自覚してもらうとことからスタートする必要があります。
直接「耳が遠くなってる」と指摘するのは避けて、間接的に指摘してください。誰でもそうですが、健康上の問題を直接指摘されるってあまりいい気分じゃありませんよね。
具体的には、以下のようにさりげなく話題をふってみてください。
- テレビで耳の話題が出たときに、さりげなく「耳の調子どう?聞こえにくいとかない?」と聞いてみる
- 「最近、人の声が聞こえにくいんだよね」と話をふってみる
- 「最近、テレビの音が大きくなってるけど聞こえにくい?」と聞いてみる
2.「耳が遠い」とはどういうことなのか知ってもらう
以下の3つを知ってもらうと「耳が遠い」ことを認めやすくなるかもしれません。
- 耳が遠くなるのはふつうのこと
- 聴力の低下は進行する
- 根本的な治療法はない
ひとつずつ見ていきましょう。
1.耳が遠くなるのはふつうのこと
耳が遠くなるのは、年齢とともに耳の機能が低下する自然な現象であり、ふつうのことだということを知ってもらいましょう。
多くの人にとって避けられないものなだということを知ってもらい、安心感を与えることはとても重要です。
聴力低下は30歳代からはじまる
ちなみに、30歳代から聴力が低下すると言われています。
難聴は65歳以上で急増、年齢を重ねるごとにどんどん増えていきます。なので、もともと聞こえがよくても、難聴になる可能性は高いということも知ってもらいましょう6。
軽度難聴以上の人の割合
swipe
スマホの方へ丨表は横にスクロールできます
60歳代 後半 | 70歳代 前半 | 70歳代 後半 | 80歳 以上 |
|
---|---|---|---|---|
男性 | 44% | 51% | 71% | 84% |
女性 | 28.% | 42% | 67% | 73% |
2.聴力の低下は進行する
聴力の低下は進行するので、時間の経過とともに症状が悪化する可能性があります。
早めに耳鼻科を受診することで、症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させることができます。
3.根本的な治療法はない
残念ですが、現在の医学では、聴力の低下を完全に元に戻す根本的な治療はありません7。
ただ、補聴器をうまくつかえば「聞こえ」が改善される可能性が大きくなります8。
補聴器はトレーニングが必要
補聴器はメガネのようにつければすぐに効果を感じるというものではありません。
脳は聞こえが悪くなった状況に慣れてしまっています。長い間運動をしないと体が「なまる」のと同じようなものです。
なまった脳に、補聴器で大きくした音を伝えても聞こえていたときのように処理できません。
うまく処理できるようになるまでトレーニングが必要になります。
補聴器をうまく使いこなすにはトレーニングが必要だということを知っておいてください。
耳鼻科へ ― 受診してもらうことの重要性
耳が遠いことを認めないかもしませんが、現在の耳の状況を知っておくためにも耳鼻科を受診してもらいましょう。
耳鼻科の受診してもらうことの重要性は以下です。
- 生活の質を向上させる
- 隠れた病気の発見
- アドバイスとケアの提案
ひとつずつ見ていきましょう。
1.生活の質を向上させる
耳が遠くなることは、高齢者の生活の質や健康に直接影響を与える可能性があります。
具体的には以下のような可能性があります。
- 高齢者の難聴は認知症になる原因のひとつだと考えられている9
- テレビの音を聞き取りにくくなることで、テレビからの気象警報や地震速報などに気づかない
- 外でうしろから来る車の気配、クラクションや自転車のベルに気づかない
耳鼻科医は、聴力のテストや適切な治療方法を提案することで、高齢者の聴覚機能を改善し、生活の質を向上させるお手伝いをしてくれます。
2.隠れた病気の発見
耳が遠いのは、「老人性難聴」だと解説しましたが、あくまでも一般論です。
耳が遠くなる原因は様々な要因による可能性があり、一部ですが、耳が遠いのは病気のサインとなることがあります。
耳鼻科医は、詳細な検査を行い、耳の問題の原因を特定することができます。また、耳が遠いことが他の病気の症状ということもありえます。
そんな可能性をつぶすためにも、早めの耳鼻科への受診が重要です。
3.アドバイスとケアの提案
耳鼻科医は、高齢者の個別の状況に基づいて、最適なアドバイスや治療プランなどを提案してくれます。
例えば、
- 補聴器の使用
- 外科的な処置
など必要な場合、耳鼻科医は適切なアドバイスをくれます。
イライラしないコミュニケーションのコツ
耳が遠くなった人とのコミュニケーションにはコツがあります。
コツを知ることで、今よりコミュニケーションがスムーズになり、イライラを減らすことができます。
- やってはいけないこと
- お互いにストレスをかけない話し方のコツ
- アプリで話し方を練習
詳しくは、これらのことについて解説した「お互いにストレスをかけない接し方とサポート」を参考にしてください。
補聴器だけじゃない ― 耳が遠い人に便利なアイテム
耳が遠くなった場合、補聴器が生活の質を向上させてくれますが、その他にも役立つ製品やサービスがあります。
- 聞こえにくさを助けてくれる「補聴器」
- 音を大きくする「集音器」
- 対話をスムーズに「コミューン」
- 人の声がクリアに聞こえる「ミライスピーカー」
- 近くに置いて聞こえる「手元スピーカー」
- 耳をふさがず聞こえる「ネックスピーカー」
- テレビに表示する「字幕」
これらの便利アイテムについては、「親の耳が遠くなった解決策『会話編』『テレビ編』」で詳しく紹介してるので参考にしてください。
ちなみに、うちの父は「1.ミライスピーカー」を利用しています。使用した感想を詳しく書いてるので「ミライスピーカーレビュー丨老人性難聴の父がつかってみた」をご覧ください。
大切なのは家族の理解とサポート
ここまで読んでいただいて、耳が遠くなった高齢者は、漠然とした不安を抱えてることがわかってもらえたと思います。
この不安を少しでも軽くすることが、「耳が遠いことを認めてもらう」ことへの近道です。
それには、以下のように家族の理解とサポートが必要です。
- 理解と共感を示す
- 間接的なアプローチ
- 専門家の助言を利用する
- 家族や友人の協力を得る
ひとつずつ見ていきましょう。
1.理解と共感を示す
高齢者にとって耳が遠いとはどういうことかを理解し、共感を示しましょう。
具体的には、以下のことを心がけてみてください。
- 相手の話に対して真剣に耳をかたむけ、相手が感じてる不安を理解しようとする姿勢を示す
- 耳が遠いことについて不安や心配をもらしたときには、「わかるよ」「つらいね」「不安だね」と共感を示す表現をつかう
- 相手がこまっている場合は、積極的にサポートする意思をみせる
これらにあわせて、誰もが年齢による変化を経験するものであることを伝えると、自身の耳の問題を認めやすくなるかもしれません。
2.間接的なアプローチ
直接的に「耳が遠い」と伝えるよりも、耳の問題を取り巻く状況や困難に焦点を当てたり、他の人の経験を共有することで、高齢者が自身の状態に気づきやすくなることがあります。
例えば、テレビの音量が大きいことや他の人の話を聞き逃すことについて話し合うなどです。
3.専門家の助言を利用する
耳鼻科医の意見や助言を高齢者に伝えることで、医療専門家が認めた事実を示すことができます。
医療専門家の情報やアドバイスは、高齢者が自身の状態を認識しやすくする上で有益です。
4.家族や友人の協力を得る
高齢者の家族や友人にも耳の問題を認識してもらい、共通の理解を持つようにお願いしてみましょう。
彼らが高齢者に対して理解を示し、コミュニケーションの工夫やサポートを提供することで、高齢者が自身の耳の問題を認めやすくなることがあります。
まとめ
「耳が遠いにを認めない」をテーマに解説してきました。
ここで簡単にまとめたいと思います。
- 音を感じる「蝸牛」の働きと、脳の情報処理能力が老化により低下することで耳が遠くなる
- 高い音から聞こえにくくなることで、話し声が聞こえにくくなる
- 聞こえにくさは年齢を重ねるごとに進行する
- 根本的な治療法はない
- そもそも耳が遠くなってるという自覚がない
- 老化による身体の変化を受け入れられない
- これまで通りコミュニケーションをとりたい
- 家族や友人に迷惑をかけたくない
- 耳が遠いことを自覚してもらう
- 耳が遠くなるのはふつうのことだと知ってもらう
- 聴力の低下は進行することを知ってもらう
- 根本的な治療法はないことを知ってもらう
最後まで読んでいただきありがとうございました。
あなたの疑問が少しでも解消され、気持ちが楽になってますように。